断食が向く人と避けたほうがよい人:女性、40代以降、持病がある方
断食を試してよい人と避けるべき人を整理しました。女性、年齢を重ねた方、アスリート、10代、そして糖尿病やPCOSなど持病のある方への、根拠にもとづく手引きです。
かんたんな答え: 断食は健康な成人の多くにとって安全で効果もありますが、誰にでも同じ形が当てはまるわけではありません。女性、年齢を重ねた方、アスリート、糖尿病、PCOS、甲状腺の病気がある方は、やり方を変える必要があります。妊娠中の方、授乳中の方、成長期の10代、摂食障害の既往がある方は、断食を避けるか、医師の管理のもとでのみ進めてください。
断食には、代謝の健康、体重の管理、認知機能に関して確かな根拠があります。ただし多くの研究の参加者は、たいてい20歳から50歳の健康な成人です。そこに当てはまらないなら、もっと具体的な手引きが要ります。
このページでは、人の集まりごとに研究が何を言っているかを扱います。恩恵を受ける人、やり方を変える必要がある人、そして避けるべき人です。
女性の断食
女性のホルモンの仕組みは、男性よりカロリー制限の合図に敏感です。女性の視床下部・下垂体・性腺(HPG)軸は使えるエネルギーの量に反応するので、厳しい断食は月経周期を乱すことがあります。とくに体脂肪が少ない人、よく体を動かす人でそうなりやすくなります。
2021年のObesity Reviewsの研究では、断食による減量は男女で同程度だった一方、断食ウィンドウが18時間を超えるやり方では、女性のほうが月経不順を報告しやすいことが分かりました。実際の結論はこうです。多くの女性にとっては14:10か16:8がうまくいきます。OMAD(一日一食)や隔日断食のような厳しいやり方には注意が要ります。
女性にとって、ほかに考えておきたいことです。
- 周期に合わせる。 卵胞期(1〜14日目)は断食が楽で、プロゲステロンが上がって必要なカロリーが少し増える黄体期はつらい、という人がいます。
- 鉄と栄養の時間。 経血の多い方は、食事ウィンドウで鉄と栄養を十分にとる必要があります。
- 更年期の前後。 この時期のホルモンの変化は空腹、代謝、睡眠に影響し、そのどれもが断食と関わります。
全体像は女性の断食にまとめています。
40代からの断食
40歳になっても断食の基本的な生理は変わりませんが、前提は変わります。代謝率はゆるやかに下がり始め(20歳を過ぎると10年でおよそ1〜2%)、筋肉量も減っていきます(サルコペニア)。正しくやれば、断食はこの二つの流れの両方を押し戻す助けになります。
Cell Metabolismに載った研究(2018)では、時間制限食が中年期の成人の代謝の指標、つまりインスリン感受性、血圧、酸化ストレスを改善しました。この年代で大事なのは、食事ウィンドウで十分なタンパク質(体重1 kgあたり最低1.2〜1.6 g)をとって筋肉量を保つことです。
関節の状態、運動後の回復、睡眠の質も、より重く効いてきます。40代の多くにとっては、生活を大きく変えずに済む16:8あたりがうまくいきます。
くわしい手引きは、下にリンクした50代以降のガイドにあります。40代から始まる変化から書き起こしています。
50代からの断食
50歳を過ぎると、筋肉を守ることの重みが増します。サルコペニアは速まり、骨密度の心配が出てきて(とくに閉経後の女性)、慢性的な病気のリスクも上がります。この年代でも断食は代謝の健康に役立ちますが、より意識したやり方が要ります。
2020年のThe Journals of Gerontologyの研究では、50歳以上の成人の時間制限食がインスリン感受性を改善し、炎症の指標を下げ、筋肉の目立った減少もありませんでした。ただしタンパク質が十分にとれていて、筋力トレーニングを続けていることが条件でした。
50歳以上の方が優先したいことです。
- タンパク質を分ける。 食事ウィンドウのなかで、1食あたり25〜30 gの質のよいタンパク質を目安にすると、筋タンパク質の合成が高まります。
- 骨の健康。 カルシウムとビタミンDを十分にとってください。断食そのものが骨密度を損なうことはありませんが、食事ウィンドウの栄養が足りなければ損ないます。
- 薬の時間。 50歳を過ぎると、食べ物と一緒に飲む薬を使っている人が増えます。食事ウィンドウはそこに合わせる必要があります。
くわしくは50代からの断食にまとめています。60代についても扱っています。
アスリートの断食
アスリートは必要なカロリーも栄養も多いので、断食はもう少し込み入った話になります。心配ははっきりしています。限られた食事ウィンドウで、トレーニング、回復、競技の力を支えるだけの燃料が入るのか、ということです。
趣味で運動している人の多くにとっては、答えは入る、です。Moroら(2016)の筋力トレーニングをしている男性を対象にした研究では、8時間の食事ウィンドウでも筋力と筋肉量を保ったまま体脂肪を減らせました。ただし持久系の選手は、練習量の多い日に長い断食ウィンドウを保つのが難しくなります。
アスリート向けの現実的なやり方です。
- 食事ウィンドウをトレーニングに合わせる。 いちばんきつい練習の前後2時間以内に、いちばん量の多い食事を置いてください。
- 試合の日は断食しない。 優先されるのは競技の力です。断食は道具であって、信条ではありません。
- 回復の指標を見る。 睡眠の質、心拍変動、記録が落ちてきたら、食事ウィンドウを広げるときかもしれません。
くわしくはアスリートの断食にまとめています。
断食と糖尿病
ここは断食に本当に見込みがある領域であり、同時に医師の管理が欠かせない領域です。
2型糖尿病は根本のところでインスリン抵抗性の病気です。断食はインスリン値を下げ、インスリン感受性を高めるので、その根本の仕組みに届きます。2022年のThe Journal of Clinical Endocrinology and Metabolismのメタアナリシスでは、2型糖尿病の人のHbA1cが断食によって平均0.3〜0.5%下がりました。薬の一部に匹敵する幅です。
一方でリスクも現実のものです。インスリンやスルホニル尿素薬を使っている方は、長い断食のあいだ低血糖の危険があります。薬の時間の調整も必要になることが多くあります。糖尿病のある方は、まず主治医か内分泌の専門医に相談してから始めてください。
1型糖尿病では、低血糖と糖尿病性ケトアシドーシスの両方の危険があるため、きわめて綿密な医学的管理なしに断食を行うことは一般に勧められません。
くわしくは断食と糖尿病にまとめています。
授乳中の断食
短く答えると、多くの専門家は授乳中の断食を勧めないか、少なくともとても控えめなやり方を勧めます。
授乳中は必要なカロリーが1日あたりおよそ300〜500 kcal増えます。カロリー制限は母乳の量を減らし、成分を変えることがあります。ゆるやかな12:12(多くの人が自然にしている形)で問題が起きることはまずありませんが、16:8やそれ以上の制限になるとリスクは高まります。
2009年のActa Obstetricia et Gynecologica Scandinavicaの研究では、急な断食が母乳の栄養素の構成の変化と関連していましたが、臨床的な意味については議論がありました。ここでは用心が優先されます。赤ちゃんの栄養が先です。
くわしくは授乳中の断食にまとめています。
10代の断食
10代はまだ成長の途中です。脳も育っています。ホルモンの仕組みもパターンを作っている最中です。カロリー制限を試す時期ではありません。
10代の断食についての研究は限られていますが、アメリカ小児科学会は、10代の制限的な食べ方は摂食障害につながる危険があるとして懸念を示しています。10代は体重1 kgあたりの必要栄養量が成人より多く、育ちつつある脳は使えるエネルギーの量にとくに敏感です。
10代の子が健康的な食べ方に関心を持ったなら、食べる時間を制限するのではなく、食品の質、規則正しい食事、十分な睡眠、体を動かすことに目を向けてください。
私たちの立場は10代の断食に書いています。
断食とPCOS
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は生殖年齢の女性のおよそ10%にみられ、インスリン抵抗性と強く結びついています。断食はインスリン感受性を高めるので、この方たちにはとくに意味があるかもしれません。
2021年にJournal of the American Nutrition Associationに載った予備的な研究では、PCOSのある女性が6週間16:8を続けたところ、インスリン値、アンドロゲンの状態、炎症の指標に改善が見られました。もっと大きな研究が必要ですが、仕組みのうえでの筋は通っています。
ただし条件があります。PCOSがあっても低体重の方、摂食障害を併せ持つ方は断食すべきではありません。ホルモンに関わる病気全般と同じく、プロトコルを変えるときはかかりつけの医師や医療専門職に相談してください。
くわしくは断食とPCOSにまとめています。
断食と甲状腺
甲状腺の働きは、使えるエネルギーの量に敏感です。長いカロリー制限はT3(活性型の甲状腺ホルモン)を下げることがあり、これを断食が甲状腺を損なう証拠と受け取る人がいます。実際はもう少し込み入っています。
短い断食(16〜24時間)ではT3が一時的に下がりますが、食べ始めれば元に戻ります。これは正常な適応の反応であって、甲状腺の損傷ではありません。ただし慢性的な強いカロリー制限は、T3の抑制を長引かせることがあり、そこは問題になります。
甲状腺機能低下症(橋本病を含む)のある方でも、総摂取カロリーが足りていれば16:8のようなほどよい断食は安全なようです。実際に気をつけるのは甲状腺の薬の時間です。レボチロキシンは空腹時に飲む必要があり、これは朝の断食とむしろ相性がよくなります。
甲状腺機能亢進症のある方は注意してください。もともと代謝率が高く、断食が体重の減少や栄養の不足を強めることがあります。
くわしくは断食と甲状腺にまとめています。
断食を避けたほうがよい人
はっきり書きます。次に当てはまる方は、断食を避けるか、明確な医学的指示のもとでのみ進めてください。
- 妊娠中の方。 妊娠中のカロリー制限は胎児の発育に影響します。
- 摂食障害のある方、拒食症や過食症の既往がある方。断食は制限のパターンを強めます。
- 成長期のお子さんと10代の方。
- 体重が大きく不足している方(BMIが18.5未満)。
- 決まった時間に食べ物と一緒に飲む薬を使っていて、その時間を動かせない方。
断食は力のある道具ですが、道具は使う人に合わせる必要があります。
Fastedにできること
Fastedは、生活と体の状態に合う毎日のウィンドウを、どれであれ支えるように作られています。控えめな12:12や14:10でも、きつめの18:6でも、プロトコルとしてそのまま持っており、必要が変われば動かせます。カスタムの長さはProにあります。統計の機能は進み具合を客観的に見せます。体重記録はFasted Proの機能です。1日1回のタンパク質と食物繊維の欄が、二つの栄養の数字を目に入るところに置きます。この2つ以外に、Fastedは食事を記録しません。
細胞の水準で断食がどう働くかは断食の科学にまとめています。始める準備ができているなら、初心者向けガイドで自分に合うプロトコルの選び方を説明しています。
よくある質問
断食は女性にとって安全ですか?
多くの女性にとっては安全です。ただし女性は、長い断食よりほどよいウィンドウ(14:10か16:8)のほうがうまくいく傾向があります。妊娠中の方、授乳中の方、無月経の既往がある方は、断食を避けるか、先に医師に相談してください。
糖尿病があっても断食していいですか?
2型糖尿病の方は、インスリン感受性への働きから断食の恩恵を受ける可能性がありますが、医師の管理が欠かせません。低血糖を防ぐために薬の調整が必要になることが多くあります。1型糖尿病の方は、きわめて綿密な医学的管理のもとでのみ断食してください。
60歳を過ぎた人に断食は向いていますか?
やり方を整えれば向いています。十分なタンパク質(体重1 kgあたり1.2〜1.6 g)、筋力トレーニング、薬の時間への配慮が大事です。16:8か14:10のほどよいプロトコルは、たいてい無理なく続けられます。とくに複数の薬を使っている場合は、新しい食事法を始める前に必ずかかりつけの医師や医療専門職に相談してください。
10代の子が断食を試すのはどうですか?
基本的に勧められません。10代は成長と発達のために多くの栄養を必要とし、制限的な食べ方は摂食障害につながることがあります。健康的な食べ方に関心があるなら、食べる時間の制限ではなく、食品の質と規則正しい食事に目を向けてください。