断食の完全ガイド:やり方、食事ウィンドウ、最初の一週間
断食の始め方をひととおり。プロトコルの選び方、食事ウィンドウの決め方、最初の一週間に起きること、続く習慣の組み立て方まで、研究にもとづいて初心者向けにまとめました。
かんたんな答え: 間欠的断食(インターミッテント・ファスティング)は、断食する時間と食べる時間を交互にくり返す食事法です。何を食べるかではなく、いつ食べるかを決めます。初心者の多くは16:8から始めます。16時間断食して、8時間の食事ウィンドウのなかで食べるやり方です。研究では減量、代謝の健康、細胞の修復に対する効果が一貫して報告されています。
断食とは何か
断食はダイエット法ではありません。どのカロリーを摂るかではなく、いつカロリーを摂るかを決める食事のパターンです。人類はずっと断食をしてきました。宗教上の理由もあれば、食べ物が足りなかったこともあり、そもそも朝食が当たり前ではなかった時代もあります。いま断食が戻ってきている背景には、体組成、インスリン感受性、老化の指標に対する測定可能な効果を示す臨床データの蓄積があります。
2019年にThe New England Journal of Medicineに掲載されたRafael de CaboとMark Mattsonのレビューは、断食が代謝の切り替えを引き起こすと結論づけています。体が主な燃料をブドウ糖から脂肪酸とケトン体へ切り替える現象です。この切り替えが、多くの人が実感する効果の仕組みになっています(de Cabo & Mattson, 2019, NEJM, 381(26), 2541-2551)。
断食がまったく初めてであれば、初心者向けの断食ガイドから順を追って読んでみてください。
人が断食する理由
断食を始める理由はさまざまです。減量したい人もいれば、頭をすっきりさせたい人、食事の準備を減らしたい人、血糖値を安定させたい人もいます。研究はそのどれも、程度の差はあれ支持しています。
体重の管理。 2020年のAnnual Review of Nutritionのメタアナリシスでは、断食による減量は継続的なカロリー制限と同程度で、一部の研究では除脂肪体重がよりよく保たれたと報告されています(Varady et al., 2020)。詳しくは減量の完全ガイドをご覧ください。
代謝の健康。 断食中はインスリン値が下がり、蓄えられた体脂肪がエネルギーとして使える状態になります。8週間ほど断食を続けただけで、空腹時インスリン、HOMA-IR、血中脂質の値が改善したという研究があります(Sutton et al., 2018, Cell Metabolism)。
細胞の掃除。 オートファジー、つまり傷んだ細胞の部品をリサイクルする働きは、断食が長くなるほど活発になります。大隅良典氏はオートファジーの仕組みの研究で2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。詳しくは断食の科学にまとめています。
単純であること。 食事の回数が減れば、決めることも、作る手間も、食べ物について考える時間も減ります。断食は食べることとの関係を複雑にするのではなく、むしろ単純にしてくれると感じる人が多くいます。
断食の始め方
完璧である必要はありません。必要なのは、無理のない計画と、それを続けることです。
ステップ1:プロトコルを選ぶ
いちばん多い入口は16:8です。16時間断食して、8時間の食事ウィンドウのなかで食べます。多くの場合、朝食を抜いて12時から20時までに食べる形になります。ただし、やり方はほかにもたくさんあります。食事ウィンドウの選び方では、よくある断食スケジュールを並べて比べられます。
16時間がきついと感じるなら、14:10がやさしい入口です。上の初心者向けガイドには、ウィンドウを1時間ずつ狭めていく手順も書いてあります。
ステップ2:食事ウィンドウを決める
生活に合う時間帯を選んでください。人と囲む夕食、勤務時間、トレーニングの時間、どれも関係します。誰にとっても最適という時間帯はありませんが、体内時計に合わせた断食の研究では、早い時間帯(18時までに食べ終える形)に代謝面での上乗せがある可能性が示唆されています(Jamshed et al., 2019, Obesity)。
ステップ3:食事を組み立てる
食事ウィンドウのなかで何を食べるかは、やはり大事です。加工の少ない食品、十分なタンパク質、質のよい脂質、食物繊維が土台になります。食事ウィンドウで何を食べるかでは、具体的な組み立て方と1週間分の例をまとめています。
ステップ4:何が断食を破るのかを知る
ここがいちばん迷うところです。ブラックコーヒー、何も入れていないお茶、水は、断食中でも問題ないとされています。カロリーのあるものは、コーヒーに入れるミルク、増量剤入りのサプリメント、インスリン反応を起こす種類のゼロカロリー甘味料まで含めて、目的しだいで断食を破る可能性があります。グレーゾーンは何が断食を破るのかで一つずつ扱っています。
最初の一週間に起きること
最初の数日がいちばんきついところです。体は決まった時間に食べることに慣れていて、空腹ホルモン(主にグレリン)がいつもの食事時間に跳ね上がります。これは体が傷んでいるしるしではありません。条件づけられた反応で、やがて薄れていきます。
断食の最初の一週間によくあるのは、次のような変化です。
- 1〜3日目: 午前中の空腹が強まり、少しいらいらしやすくなります。水分不足やカフェインの時間帯が変わったことで頭痛が出ることもあります。
- 4〜5日目: 空腹の合図が弱まりはじめます。ケトン体が増えてくるため、断食中に集中しやすくなったと感じる人も多くいます。
- 6〜7日目: 新しい時間割が自然に感じられてきます。エネルギーの波も落ち着いてきます。
立ちくらみ、睡眠の乱れ、お腹の調子の変化など、副作用が出る人もいます。多くは一時的で、水分と電解質をきちんと摂れば対処できます。
よくある失敗
断食をやめてしまう人の多くは、やり方が合わなかったからではなく、避けられる失敗をしたからです。代表的なものを挙げます。
食事ウィンドウで食べすぎる。 断食はカロリーの余白を作りますが、好きなだけ食べてよいという意味ではありません。8時間で3,000 kcal食べれば、いつ食べようと体脂肪は減りません。
水分が足りない。 1日に摂る水分のおよそ20%は食べ物から来ています。食事を抜くなら、その分を意識して飲んで補う必要があります。
いきなり厳しくしすぎる。 1日3食プラス間食から一気に20:4へ飛ぶと、まず失敗します。14:10か16:8から始めて、いまの形が楽になってから次へ進んでください。
睡眠を軽く見る。 睡眠が足りないとコルチゾールとグレリンが上がり、断食は目に見えて難しくなります。7〜9時間を優先してください。
時計にとらわれる。 12:00のつもりが12:15に終わっても、その断食が台無しになるわけではありません。1日の正確さより、数週間続くことのほうがはるかに重要です。
結果が出るまでの期間
目標、出発点、続け方によって変わります。発表された研究と臨床での観察にもとづく、おおよその目安です。
- 1〜2週間: お腹の張りが減り、エネルギーが安定し、空腹の波が整ってきます。
- 4〜8週間: 体重とウエスト周りに測れる変化が出ます。2014年のTranslational Researchのレビューでは、3〜24週間の断食で体重が3〜8%減ったと報告されています(Barnosky et al., 2014)。
- 8〜12週間: 空腹時インスリン、血圧、炎症の指標の改善が血液検査で見えるようになります。
詳しくは断食の結果が出るまでの期間をご覧ください。
体のなかで起きていること
断食が単に食べる量を減らすことと違うのは、断食が長くなったときに体が入る代謝の状態にあります。断食12時間から36時間のあいだに、いくつかの働きが加速します。
- インスリンが下がり、脂肪が動員できるようになります。
- 成長ホルモンが増え、筋肉の維持を支えます(Hartman et al., 1992, Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)。
- ノルアドレナリンが上がり、短期的には代謝率が上がります。
- オートファジーが活発になり、傷んだタンパク質や細胞小器官が片づけられます。
時間ごとに見る断食の科学では、この変化を断食の経過に沿って並べています。
断食を避けたほうがよい人
断食は誰にでも向いているわけではありません。次に当てはまる方は、始める前に医師に相談してください。
- 妊娠中の方、授乳中の方。
- 摂食障害の既往がある方。
- 1型糖尿病の方、食事と合わせて飲む必要のある薬を使っている方。
- お子さんと未成年の方。
- 低体重の方(BMIが18.5未満)。
これで全部ではありません。慢性的な病気がある場合は、先に医師の許可を得てください。
Fastedにできること
習慣は、進み具合が見えると続けやすくなります。Fastedでは断食スケジュールを設定し、断食ウィンドウと食事ウィンドウの経過を追い、連続記録を時間の流れとして見られます。食事ウィンドウの開始と終了はリマインダーで知らせるので、時計を気にする必要はありません。断食中の体調は日記に残せます。どの時間割と食べ方が自分の体に合うのかが、あとから見返してわかります。
初めての16:8断食でも、もっと長いプロトコルを試すときでも、目に見えるタイマーと過去のデータがあると、断食は手ごたえのあるものになり、続けやすくなります。
よくある質問
断食は安全ですか?
健康な成人であれば、多くの場合は安全です。2019年のThe New England Journal of Medicineのレビューは、断食は体重管理と代謝の健康にとって安全で効果的だと結論づけています。ただし、特定の病気がある方、妊娠中の方、摂食障害の既往がある方は、先に医師に相談してください。
断食中にコーヒーを飲んでもいいですか?
砂糖もミルクも生クリームも入れないブラックコーヒーは、ほとんどの目的で断食を破りません。カロリーはごくわずかで、インスリンの反応もほとんど起こしません。断食中の脂肪燃焼をカフェインが後押しする可能性を示す研究もあります。詳しくは何が断食を破るのかをご覧ください。
断食すると筋肉は落ちますか?
16〜24時間の断食であれば、十分なタンパク質と筋力トレーニングを組み合わせているかぎり、意味のある量の筋肉が落ちることはありません。断食中に増える成長ホルモンは、むしろ筋肉の維持を支えます。48時間を超える長時間断食では、筋肉が分解されるリスクが高まります。詳しくは断食と筋肉の落ち方をご覧ください。
断食と欠食は何が違いますか?
違いは、意図と規則性です。行き当たりばったりに食事を抜くと、あとで反動的に食べすぎることが多くなります。断食は決まったパターンなので、空腹ホルモンと代謝の働きが読めるリズムに慣れていきます。研究で測れる効果を生んでいるのは、この慣れのほうです。
初心者に向いている断食スケジュールはどれですか?
多くの専門家と研究が16:8を出発点として挙げています。たいていの生活に収まる柔軟さがあり、代謝面の変化を起こすだけの長さがあり、長く続けられます。設定の手順は断食の始め方で説明しています。