断食を毎日の生活に収める:運動、お酒、人づきあい、睡眠
断食を実際の生活に収めるための実践ガイド。運動、コーヒー、人との食事、旅行、睡眠、空腹への対処まで、研究にもとづいて役に立つやり方をまとめました。
かんたんな答え: 断食のために生活を作り直す必要はありません。大事なのは、いまの日課に収まる時間割を選ぶこと、予定が動いたときに融通を利かせること、そして毎日の習慣(コーヒー、運動、人との食事)のうち断食中に本当に効くものと、そうでないものを知っておくことです。厳しい食事制限ではなく時間の枠組みとして扱いはじめると、思ったより楽だと感じる人がほとんどです。
断食を始めるのは難しくありません。生活が乱れたときに続けること、ここで多くの人がつまずきます。
火曜に食事の約束が入る。出張で時間割が崩れる。朝、猛烈な空腹で目が覚めて、コーヒーに生クリームを少し垂らしたら全部台無しになるのだろうかと考える。どれも例外的な状況ではありません。日常そのものです。
このページでは、断食で実際に起きる困りごとを扱い、それぞれに根拠のある対処を示します。完璧である必要はありません。
運動と断食は両立するか
まず聞かれるのが、断食中に運動していいのかという問いです。短く答えるなら、してかまいませんし、多くの人にとっては驚くほどうまくいきます。
2016年にJournal of Translational Medicineに載った研究では、筋力トレーニングと16:8を組み合わせた参加者は、同じカロリーをふつうの時間割で食べた参加者より体脂肪を多く落とし、筋肉量は保ちました(Moro et al., 2016)。空腹時の運動で脂肪の燃焼が高まるのは、インスリン値が低く、蓄えた脂肪が燃料として使いやすいからだと考えられます。
とはいえ、運動の種類は関係します。軽めから中くらいの有酸素運動と、ふつうの筋力トレーニングは断食と相性がよい部類です。高強度のものや長時間の持久系は、前に補給しないと質が落ちることがあり、断食に慣れていないうちはとくにそうです。
現実的なやり方は、断食ウィンドウの終わりごろか、食事ウィンドウの早い時間にトレーニングを置くことです。そうすれば、終わってすぐに補給できます。
くわしくは断食と運動にまとめています。
コーヒーの問題
先に片づけておきます。ブラックコーヒーは断食を破りません。カロリーはごくわずかで、意味のあるインスリン反応も起こしません。むしろカフェインは代謝率をわずかに上げ、食欲を抑えることで断食を助ける可能性があります(Schubert et al., 2014)。
問題になるのは、そこに何を入れるかです。生クリーム大さじ1(およそ50 kcal)でオートファジーや脂肪燃焼が意味のある形で崩れることはまずありませんが、砂糖入りのフレーバーラテなら確実に崩れます。量の問題です。
主に減量のために断食しているなら、コーヒーに少し脂質が入るのは大きな問題ではありません。オートファジーや腸の休息が目的なら、何も入れないコーヒー、お茶、水にとどめてください。
コーヒーもふくめ、よく聞かれる飲み物は断食中に飲めるものにまとめています。
お酒と断食
お酒と断食の関係は少し込み入っています。当然ながら、断食ウィンドウ中にカロリーのある飲み物をとれば断食は破れます。ただし本当の問題は、食事ウィンドウでお酒が何をするかです。
アルコールは肝臓で優先的に処理されるため、その処理が終わるまで脂肪の燃焼は事実上止まります。1999年のAmerican Journal of Clinical Nutritionの研究では、アルコールが脂肪の燃焼をおよそ73%抑えることが示されました(Siler et al., 1999)。体脂肪を落としたいなら、頻繁に飲むことは断食の時間割にかかわらず進みを遅くします。
食事ウィンドウのなかで、ほどほどに、ときどき飲むのであれば断食と両立します。要は「ほどほど」です。週に2回ほど、食事と一緒に1〜2杯であれば、これまでの積み重ねが崩れることはまずありません。
くわしくは断食とお酒にまとめています。
旅行中の断食
旅行は、どんな食事法にとっても最大の試練です。時差はずれ、選べるものは限られ、日課は崩れます。
よい知らせもあります。断食は旅行中に保ちやすい食事法の代表格です。判断すること自体が減るからです。空港で「食べていいもの」を探す必要はありません。ウィンドウが開くまで、ただ食べないだけです。
時差をまたぐときは、食事ウィンドウを少しずつずらしてください。ニューヨークからロンドンへ(5時間進む)飛ぶなら、すぐに新しい時間割へ切り替えようとせず、移動の日は断食を2時間ほど延ばします。体内時計は2〜3日で合ってきますし、食事ウィンドウもそれに合わせて動かせます。
断食を長く続けるためのガイドには、空港での食事から時差の合わせ方まで、移動中の節があります。
人づきあいと断食
これはいちばん軽く見られがちな難しさかもしれません。人は誰かと食べる生き物です。誕生日の食事、職場の昼食、週末のブランチ。食べ物は人とのつながりに織り込まれています。
答えは、集まりのたびに自分の断食の時間割を宣言する人になることではありません。やり方のほうに融通を組み込んでください。ふだん12時から20時に食べていて、21時に予約が入ったなら、その日はウィンドウをずらすだけです。週に1〜2回、遅い食事ウィンドウになっても結果は損なわれません。
2019年のNutrientsのレビューでは、全体のパターンが長く保たれているかぎり、断食の代謝面の効果は多少の時間のずれに揺るがないと報告されています(Patterson & Sears, 2017)。
予定と断食の折り合いについては断食と人づきあいにまとめています。年末年始の集まりも扱っており、そのあとの4週間については1月のリセットにあります。
忙しいときにどう続けるか
意外なようですが、忙しい人のほうが、予定の決まっていない人より断食を楽にこなします。会議が続いているときや仕事に没頭しているとき、食べ物のことは考えません。断食ウィンドウは引っかかりなく過ぎていきます。
難しいのは、手の空いた日や、ストレスで食べたくなる日です。はっきりした計画があると助かります。食事ウィンドウを決めておく、そのウィンドウ用の食事を先に作っておく、断食の時間は仕事、体を動かすこと、何か夢中になれることで埋める。
献立の作り置きと、詰まった一週間のための時間割の型は、上と同じ長く続けるためのガイドにあります。
睡眠と断食
断食と睡眠の関係は双方向で、しかも重要です。睡眠が足りないとグレリン(空腹ホルモン)が上がり、レプチン(満腹ホルモン)が下がるため、翌日の断食は目に見えて難しくなります(Spiegel et al., 2004)。睡眠を大事にすることは、断食を支えるうえでもっとも効くことのひとつです。
反対に、断食をしている人の多くが睡眠の質の改善を報告しています。とくに寝る2〜3時間前に食べ終えた場合です。夜遅くの食事は体内時計の乱れと睡眠の質の低下に関連します。2019年のNutrientsの研究では、体内時計に合わせた時間制限食が、太りぎみの成人の主観的な睡眠の質を改善しました。
くわしくは断食と睡眠にまとめています。
空腹への対処
断食中の空腹は本物ですが、誤解されがちです。主な空腹ホルモンであるグレリンは、本当にカロリーが足りているかどうかではなく、いつも食べている時間に合わせて動きます。断食を始めたばかりのころは、ふだん食べている時間に空腹を感じます。1〜2週間で、グレリンの出方は新しい時間割に合い、その空腹の波ははっきり弱まります(Natalucci et al., 2005)。
それまでのあいだは、実際に役に立つ手があります。炭酸水、ブラックコーヒーやお茶、塩をひとつまみ、そして何かに没頭すること。空腹は波でやってきます。15〜20分の山をやり過ごせば、たいてい引いていきます。
具体的な工夫は断食中の空腹への対処にまとめています。
頭のさえとエネルギー
断食している時間のほうが集中できるという声は多く、そこには理由があります。断食中、体はケトン体を燃料として多く使うようになります。主なケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)は血液脳関門を通り、神経細胞に効率のよいエネルギーを届けます。BHBは認知機能を支えるBDNF(脳由来神経栄養因子)を増やす可能性も示唆されています(Mattson et al., 2018)。
とはいえ、断食で誰もが天才になるわけではありません。反応には個人差がありますし、強いカロリー制限は認知機能を落とします。ただ、ウィンドウのなかで十分に食べている人にとって、断食の時間はもっともはかどる時間になりえます。
くわしくは断食と脳の健康と、エネルギーが落ちる時刻と上がる時刻を追った時間ごとに何が起きるかをご覧ください。
長く続けられる形にする
いちばん効くプロトコルは、続けられるプロトコルです。2022年のAnnual Review of Nutritionのメタアナリシスでは、断食の研究すべてを通じて、結果をもっともよく予測したのは選んだプロトコルではなく、続けられたかどうかでした。
長く続けるこつは、断食を厳しい規則ではなく、融通の利く枠組みとして扱うことです。実際の目安を挙げます。
- あらかじめ崩れる日を組み込む。 週に1〜2日、時間割から外れても積み重ねは消えません。
- 人生の段階に合わせる。 独身のころに合っていた20:4が、家族との夕食の時間には合わないかもしれません。
- 自分のパターンを記録する。 何が効いているかが見え、やめてしまう前にずれに気づけます。
- ときどき見直す。 必要なものは変わります。断食のやり方も変わってよいのです。
数か月、数年の単位で続けるための全体像は断食を長く続けるにまとめています。
Fastedにできること
断食を実際の生活に収めるのは、自分のパターンがはっきり見えるほど楽になります。Fastedでは好みの断食スケジュールを設定し、単純なタイマーで1回ずつ記録し、履歴を見返して何が効いているかを確かめられます。連続記録は、たまに外れた日を責めることなく一貫性を支えます。統計の画面は数週間から数か月の傾向を見せるので、あてずっぽうではなく実際のデータをもとにやり方を調整できます。
始めたばかりなら、初心者向けの断食ガイドで最初のプロトコルの選び方を説明しています。ウィンドウで何を食べるかは栄養へどうぞ。
よくある質問
断食ウィンドウは日によって変えてもいいですか?
かまいません。断食は同じパターンを保つといちばんうまくいきますが、日によって1〜2時間ずらす程度は問題ありません。研究では、日ごとの厳密さより全体のパターンのほうが効くと示されています。ほとんどの日は同じにして、必要な日は融通を利かせてください。
断食すると代謝は落ちますか?
短い断食(24〜36時間まで)で代謝率が下がることはないようです。それどころか、ノルアドレナリンの放出によって短い断食中は代謝率がわずかに上がるという研究もあります(Zauner et al., 2000)。代謝を落とすのは長く強いカロリー制限であって、十分に食べている時間制限食ではありません。
断食に慣れるまでどのくらいかかりますか?
空腹や慣れるまでの症状(軽い頭痛、いらいら)は、7〜14日でおさまったという声がほとんどです。グレリンの出方は、およそ2週間で新しい食事の時間割に合ってきます。14:10のようなやさしいプロトコルから始めて少しずつ延ばすと、移行はなだらかになります。
断食は毎日やっても安全ですか?
健康な成人であれば、16:8のような毎日の時間制限食は安全で、研究の蓄積もあります。2023年のNew England Journal of Medicineのレビューでは、毎日の時間制限食は12か月までの試験で安全とされました(de Cabo & Mattson, 2019, 更新レビュー)。ただし特定の病気がある方は、断食を始める前にかかりつけの医師や医療専門職に相談してください。